日本農芸化学会誌
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草類蛋白質の栄養価(第8報)
青刈大豆葉蛋白質の消化に及ぼす各種乾燥方法の影響について(其の3) 低温通風乾燥の影響
神立 誠保井 忠彦
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1959 年 33 巻 10 号 p. 893-898

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抄録

青刈大豆葉蛋白質の栄養価値が乾燥すると低下する原因を明らかにするために,その生葉消化試験に用いたのと同一の生葉を45°通風乾燥し,これについて家兎を用いて消化試験を行い,生葉の場合と比較考察して次の様な結果を得た.
(1)青刈大豆葉を45°通風乾燥した場合全窒素含量に僅かの減少が認められたが,一般成分の変化はなかった.しかしその消化率は生葉に比して粗繊維が平均28.4%で少し良く,純蛋白質が平均75.6%で少し低かった.その他の成分については可溶無窒素物で11.5%,他では概して3~5%の低下が認められ,これ等は従来の成績によく似ている.この場含にペントザンの消化は変化なく,粗脂肪もまた生葉と全く同じでその消化率は負であった.
(2)粗蛋白質には通風乾燥により少しく減少が認められるが,同時に水溶性, 10% NaGl溶性及び0.3% NaOH溶性粗蛋白質の減少が著しく,不溶性蛋白質が顕著な増加を示した.この様な変化を伴った粗蛋白質の消化率は平均75.9%で,生葉に比し3%の低下が認められたが,これを各種形態別蛋白質の消化率の変化から見ると含量の減少の著しい前記三種の溶性粗蛋白質の消化率の低下が同時に著しかった.不溶性蛋白質の消化率は良くなって居り,全体の約40%を占める0.3%アルカリ性60%熱アルコール溶髄粗蛋白質の消化率は平均89.5%で極めて良く,生葉のそれと比して若干良かった.これらの理由としては青刈大豆通風乾燥葉の摂取は腸管内壁への刺激を強め,消化液の分泌増加等による所謂metabolic fecal nitrogenの排泄増加を来たしたため,その見掛けの消化率の低下を来すのではないかと推論した.
(3)純蛋白質には通風乾燥による分解減少は認められないが,各溶性区分純蛋白質の変化及びそれ等の消化率の低下は,粗蛋白質のそれと同一の傾向にあった.各溶性区分純蛋白質の消化率低下の原因も亦,粗蛋白質について考えられたと同じと推定される.
(4)通風乾燥葉の各種形態別蛋白質の消化率を求める場合にも,糞中の窒素形態は毎日測定する必要がある.

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