日本農芸化学会誌
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微生物に対する表面活性剤の作用
殺菌作用と透過性に及ぼす影響
大林 晃
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1961 年 35 巻 1 号 p. 61-66

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抄録

(1) 乳酸菌L. plantarum, L. sakéのintact cellの懸濁液に表面活性剤を添加すると菌体内の遊離アミノ酸が液中に漏洩したり,乳酸の菌体内への透過が増大するが,この漏洩度,乳酸の透過性の増大度は各表面活性剤の殺菌力に平行的である.
(2) また,表面活性剤はその殺菌力に応じて乳酸菌の代謝物質であるグルコース,グルコン酸の菌体内への透過を妨げる.
(3) CTABを添加して最早生育せず(plateにてcolonyを作らない),解糖作用も行なわず(基質のグルコースの透過性を失った),乳酸の透過性が変化した菌体の懸濁液にA-1を添加して洗滌すると,その菌体は再び生育し,透過性に関してもintact cellと同じようになる.
(4) 以上の事実から,乳酸菌に対する表面活性剤の殺菌作用は菌体の透過性をその菌の生育に不適当な選択性のものに変化させるためと考えられ,これが菌体と直ちに強力に結合する性質と相俟って見掛上は瞬間的な殺菌作用を示すようになると思われる.
(5) L. plantarumLeuc. mesenteroidesの乳酸の透過性に対するCTABの作用より判るように,同じ表面活性剤でもintact cellに作用して如何なる性質の透過性に変化させるかは夫々の菌種によって異るようである.
(6) また,陰イオン活性剤は酵素作用を阻害するので,このものの殺菌は透過性を変化させる作用によるだけでなく,蛋白質の変性作用も関係していると考えられる.

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