日本農芸化学会誌
Online ISSN : 1883-6844
Print ISSN : 0002-1407
ISSN-L : 0002-1407
Thiramとその関連化合物に関する研究(第8報)
Thiramの熱分解(その5)
村田 道雄
著者情報
ジャーナル フリー

1961 年 35 巻 12 号 p. 1154-1158

詳細
抄録

(1) Thiramにジメチルアミンガスを吹き込みながらその融解温度において加熱分解をおこない,分解物としてtetramethylthiourea,二硫化炭素,イオウおよびdimethylammonium dimethyldithiocarbamateを単離し,発生するガスより硫化水素の生成を認めた.なお,単離した生成物の量は,硫化水素の吹き込みあるいは水の介在における熱分解の生成物とくらべ二硫化炭素の量が少ない反面, dimethylammonium dimethyldithiocarbamateの量が多かった.
(2) Bis (dimethylthiocarbamoyl) monosulfideにジメチルアミンガスを吹き込みながら分解をおこなった結果, thiramの場合にくらベイオウの生成をみなかった他はほぼ同様の成績を得た.
(3) Tetramethylthioureaとジメチルアミンを,室温放置および煮沸をおこなったが両者は反応しないことがわかった.
(4) ジメチルアミン水溶液に硫化水素を飽和させて反応を試みたが,両者から別個の物質は生成されなかった.
(5) 以上の実験結果を考察し, thiramは第一段階でイオウの1原子を遊離してbis (dimethylthiocarbamoyl) monosulfideとなり,ついで二硫化炭素とtetramethylthioureaに分解し,ここに生じた二硫化炭素の一部分は添加されたジメチルアミンと反応してdimethylammonium dimethyldithiocarbamateを生成する.また, bis (dimethylthiocarhamoyl)monosulfideの一部分は, tetramethylthioureaと硫化水素に,あるいはdimethylammonium dimethyldithiocarbamateとtetramethylthioureaに分解するものと推論される.

著者関連情報
© 公益社団法人 日本農芸化学会
前の記事 次の記事
feedback
Top