日本農芸化学会誌
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変性卵白アルブミンに関する研究(第4報)
酸変性卵白アルブミンの滴定曲線.特にそのカルボキシル基の解離について
米沢 大造
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1961 年 35 巻 5 号 p. 419-424

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抄録
(1) イオン強度0.05, 0.1, 0.2において酸変牲卵白アルブミンと未変性のものとの滴定曲線を求めて比較した,その結果によるとpH 8から酸性側で変性アルブミンは,未変性のものよりも高い水素イオン結合量を示した.水素イオン結合量の差の最大は変性アルブミンの等イオン点附近(pH 5~6)に存し,その差は蛋白1分子当りの水素イオン結合量としてイオン強度0.05, 0.1, 0.2に対しそれぞれ7.0, 8.0, 8.6であった.又変性アルブミンの等イオン点はイオン強度0,05, 0.1, 0.2に対し,それぞれ5.61, 5.65, 5.69であった.
(2) 変性アルブミンのカルボキシル基の解離を式
pH=pK+logα/1-α-0.868wZ
を用いて解析し,
1) 変性アルブミンが等電点附近で異常に高いw値を示す原因を,変性蛋白分子が密集するために分子間に静電気的な相互作用がはたらくことに帰した.
2) 等電点附近で相当数のアニオンが変性アルブミンに結合していることを推論し(例えばイオン強度0.1で分子当り6箇),カルボキシル基のpKが未変性状態の4.3から4.7附近へと高められていることを結論した.これは卵白アルブミンのカルボキシル基がnativeの状態における特殊な状態から変性によって解放せられたことを示すものである.
(3) pH 4附近において変性アルブミンが未変性のものにくらべて,その水素イオン結合量の割合に速かに電気泳動することを認め,その原因を変性アルブミンの凝集粒子の表面と内部とにおいて水素イオンの結合量が不均一であることに帰した.
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