日本農芸化学会誌
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酵母によるヌクレオチドの分泌(第6報)
クエン酸緩衝液添加培養時に分泌される紫外部吸収性物質の分離と同定
田中 晴雄樋口 昌孝植村 定治郎
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1962 年 36 巻 12 号 p. 978-983

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抄録

ビール酵母をクエン酸緩衝液添加硫安培地(窒素源を硫酸アンモンとする合成培地)で培養した場合に培地中に分泌されるUV吸収物質を活性炭吸着-アンモニア・エタノール混液溶出, Dowex 1 (ギ酸型)によるイオン交換樹脂クロマトグラフィーにより分画し,次のような結果を得た.
(1) 静置培養時の分泌UV吸収物質のうち約25%はDowex 1に吸着されない非ヌクレオチド性のものであった. Dowex 1吸着区分はその70%あまりがCMP, AMP, GMP, UMPのモノヌクレオチドであり,その外にも未同定の少量の溶出区分が4つあった.ヌクレオチドのモル比はAMPを1とすると, CMP O.73, GMP O.93, UMP 1.40であった.
(2) 振とう培養時の分泌UV吸収物質について同様の実験を行なった. Dowex 1非吸着区分は約22%,これは主にヌクレオシドであった.吸着区分の溶出パターンは分離がよかったため多数のピークが出現したが,基本的には静置培養の場合と同様モノヌクレオチドであった,モノヌクレオチドの組成も静置培養の場合と大差なかった. 5'-ヌクレオチドはGMPを除く各モノヌクレオチド区分に検出されたが,その割合は全体の20%足らずであった.
前報並びに以上の分析結果に基づいて分泌機作について考察し,分泌物は増殖中の酵母のRNAの分解物であろうと推定した.

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