日本農芸化学会誌
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酢酸菌によるフラクトーズの酸化(第11報)
再び5-オキマルトールの構造について
寺田 治鈴木 静子木下 祝郎
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1962 年 36 巻 12 号 p. 984-988

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抄録

Gluconobacter cerinusおよびその近縁酢酸菌がブラクトーズから生成する3種のγ-パイロン中さきに(1)イソ麹酸(2)と同定,報告し,その後合成的手段によって5-オキシマルトールであることを証明,報告(3)したpyrone-1 (仮称)について,バリタ分解法による構造の再検討をこころみ, pyrone-Iが5-オキシマルトールであることを再確認した.
〔補遺〕著者等の得た5-オキシマルトールの赤外部吸収(KBr tablet法)(1,3)と相田等(2)のイソ麹酸の赤外部吸収が6.5~7μ領域に多少の差異を有し,これがおそらく測定法の差によるものであろうことはすでに述べたが(3), Nujol法によって得られる5-オキシマルトールの赤外部吸収(第3図)は醗酵,合成両試料ともに完全に相田等の記載に一致する.従って既報(1,3)の諸性質の一致と併せ考えれば,イソ麹酸として報告された物質が5-オキシマルトールであることは疑問の余地がない.
第3図 醗酵および合成5-オキシマルトールの赤外部吸収(Nujol法) (I)醗酵による試料(II)合成による試料
本研究を通じて元素分析は東大農学部農芸化学教室分析室,同応用微研第8研究室および薬学部中央分析,赤外部吸収の測定は薬学部中央分析および当研究所湯浅治郎氏によるものである.また研究の進行中東大名誉教授朝井勇宣博士はじめ多数の方々の御教示を得た,以上の方々に深甚の謝意を表する.

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