日本農芸化学会誌
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ブドウ糖の果糖への異性化に関する研究(第1報)
水酸化ナトリウムによる異性化の基礎条件の検討
貝沼 圭二鈴木 繁男
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1964 年 38 巻 12 号 p. 556-561

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抄録

(1) Lobryde Bruyn-Alberda van Ekensteinの糖転移反応を利用し,ブドウ糖の甘味増強を目的として,水酸化ナトリウムを触媒とした場合の基礎的反応条件を検討した.
(2) この反応において,ケトース生成量の最高値はPKF 33~35%の点にあった.
(3) 反応時のpHは,ケトース生成量に与える影響が大きく,反応温度は56~97°の実験範囲においては反応速度を支配する因子であり,到達するPKF値にはほとんど関係がない.
(4) この反応中触媒として加えた水酸化ナトリウムは異性化反応の他に,副反応として着色物質,有機酸の生成をおこすが, 650mg/mlの糖溶液に1%相当の水酸化ナトリウムを加えた系においては, PKFが33%に達した時の糖の損失は3~4%であり, 56°の場合にも97°の場合にもほとんど変らなかった.
(5) 生成したケトースの大部分はフラクトースであることを,分離精製した結晶の各恒数およびペーパークロマトグラムより認めた.
(6) この条件で異性化した糖液を,活性炭,イオン交換樹脂(Amberlite IR-120, IRA-411)で精製すると,グルコース60~63,フラクトース40~37の混合物を得ることができた.
(7) 糖濃度を飽和に近い状態で高温短時間処理により,ブドウ糖を果糖へ連続的に異性化できる可能性を認めた.

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