日本農芸化学会誌
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38 巻, 12 号
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  • タバコの葉におけるニコチンの脱メチルの特異性ならびに脱メチル機構に関する考察
    木佐木 卓郎, 玉置 英之助
    1964 年 38 巻 12 号 p. 549-555
    発行日: 1964年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    ニコチンを構成する三つの部分,ピリジン,ピロリジンおよびメチル基をそれぞれ変型した各種ニコチン類縁化合物をタバコの葉に供与し,その結果にもとづいてタバコの葉(N. tabacum, “Cherry Red”)におけるニコチンの脱メチルの特異性を検討するとともに,ニコチンの脱メチル機構について考察を加えた.
    (1) ニコチンの脱アルキルの特異性については次の結論ならびに推論を得た. a) タバコの葉の脱アルキル反応の基質の必要最少構造はpy-〓H2-の相対配置であろう.側鎖の窒素原子はアンモニウムイオンである必要があろう. b) ニコチンのピリジン環はピリドン環で代用され得る. c) ピリジンの2位置換基(ヒドロキシル)は脱アルキルの立体障害になるように考えられる.
    (2) a) 1'-(3-Pyridyl)-1'-methylethylaminoethaneは脱アルキルされ, 1'-(3-pyridyl)-1'-ethylamino-ethaneを与えることはニコチンの脱メチル中間体としてピロリジン環の1', 2'あるいは1', 5'開環体が生成しないことを示唆している. b) l-ニコチンから一部ラセミ化したl-ノルニコチンが生成する際のラセミ化は,二,三の根拠からニコチン-酵素のような状態で起ることが想定される. c) Nicotine-1'-oxideはノルニコチンをほとんど生成しないのでnicotine-1'-oxideはニコチンの脱メチル中間体ではないことを示している.
  • 水酸化ナトリウムによる異性化の基礎条件の検討
    貝沼 圭二, 鈴木 繁男
    1964 年 38 巻 12 号 p. 556-561
    発行日: 1964年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    (1) Lobryde Bruyn-Alberda van Ekensteinの糖転移反応を利用し,ブドウ糖の甘味増強を目的として,水酸化ナトリウムを触媒とした場合の基礎的反応条件を検討した.
    (2) この反応において,ケトース生成量の最高値はPKF 33~35%の点にあった.
    (3) 反応時のpHは,ケトース生成量に与える影響が大きく,反応温度は56~97°の実験範囲においては反応速度を支配する因子であり,到達するPKF値にはほとんど関係がない.
    (4) この反応中触媒として加えた水酸化ナトリウムは異性化反応の他に,副反応として着色物質,有機酸の生成をおこすが, 650mg/mlの糖溶液に1%相当の水酸化ナトリウムを加えた系においては, PKFが33%に達した時の糖の損失は3~4%であり, 56°の場合にも97°の場合にもほとんど変らなかった.
    (5) 生成したケトースの大部分はフラクトースであることを,分離精製した結晶の各恒数およびペーパークロマトグラムより認めた.
    (6) この条件で異性化した糖液を,活性炭,イオン交換樹脂(Amberlite IR-120, IRA-411)で精製すると,グルコース60~63,フラクトース40~37の混合物を得ることができた.
    (7) 糖濃度を飽和に近い状態で高温短時間処理により,ブドウ糖を果糖へ連続的に異性化できる可能性を認めた.
  • イカ肉の酵素的分解
    杉本 洋, 岩浅 孝, 石井 茂孝, 横塚 保
    1964 年 38 巻 12 号 p. 562-566
    発行日: 1964年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    (1) 放線菌No.41株の生産する酵素系を用いてイカ肉の酵素的分解を試みた結果,蛋白質が加水分解され多量のアミノ酸を生ずるとともに,イカ肉中の5'-AMPはほぼ定量的に5'-IMPに変換した.
    (2) 分解液は強い旨味を呈し,かんたんな後処理を加えることにより食品用調味基材として好適なものとなった.
    (3) 5'-AMPデアミナーゼの二,三の酵素的性質について検討を加えた.
  • 一放線菌Streptomyces sp. No. 41の生産するホスホジエステラーゼについて
    杉本 洋, 岩浅 孝, 横塚 保
    1964 年 38 巻 12 号 p. 567-575
    発行日: 1964年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    (1) 放線菌No.41株の生産するホスホジエステラーゼ(PDase)についてSephadex G-50及びDEAEセルロースを用いてのカラムクロマトグラブィー,及びデンプン層電気泳動により収率2.9%で500倍に精製を行い,この精製の結果,蛋白的にも炭単一の活性ピークが得られたが,各精製の段階にけるPDaseの行動は共存するホスホモノエステラーゼ(PMase)の行動に全く一致し,両者の分離は最後まで不可能であった.
    (2) 精製酵素標品を用いてビスパラニトロフェニルホスフェート(bPNPP)を基質として本酵素のPDaseとしての性質を検討した結果,本酵素はその活性の発現にCa++イオンを要求し, Ca++イオンはまた本酵素の温度安定性に著効があった.
    最適反応pHはpH8.6,最適反慈温度は43°であった.金属キレート試薬,なかんずくEDTA及びPiにより強い阻害を受ける.
    これらの諸性質の大部分はPMaseとしての性質にもよく一致した.
    (3) 本菌株胞子のX線照射により得られたPMase生成能欠損変異株は例外なく,同時にPDase生成能欠損変異株であった,この結果,両酵素活性は遺伝的にも共通の支配を受けていることが判明した.
    (4) PDase及びPMase両酵素活性の類似性ないし同一性について若干の考察を試みた.
  • 蛋白分解酵素に対する感受性,およびトリクロル酢酸濃度変化による分別蛋白の検討
    道口 正雄
    1964 年 38 巻 12 号 p. 576-579
    発行日: 1964年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    照射小麦グルテンについて,蛋白分解酵素「プロナーゼ」による分解度の変化,また試料の酢酸懸濁液中の蛋白をTCA濃度を変化させることによって分別し,それらの濾液についてCu-Folin呈色度および混濁度(420mμの吸光度で表わす)の変化を測定し,グルテン蛋白の照射変性を検討した.
    (1) 小麦グルテンは照射線量の増加につれて「プロナーゼ」によって明らかに分解され難くなることを認めた.
    (2) 照射線量の増加につれて,グルテン蛋白中に非蛋白性物質の増加を認めた.そしてこの物質の窒素単位量当りのFolin呈色度は線量の増加につれて増加することを認め,これらの物質は照射線量によって質的に異るものであると結論した.
    (3) 0.02Mの濃度において,照射試料のTCA分別液のCu-Folin呈色度および混濁度は,他の濃度における分別液の挙動とは著しく異っており,これらの結果からグルテンの酢酸可溶性蛋白部分(主としてグリアジンと考えられる)も照射によって変化し,特に600×104rep以上の高線量で著しいことを確認した.
  • Aspergillus nigeyが生産するアラバナーゼの性質
    梶 明, 田川 清
    1964 年 38 巻 12 号 p. 580-584
    発行日: 1964年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    Asp. nigerの変異株を使用して製造された市販サナクターゼよりアラバナーゼを抽出,精製した.アラバナーゼの最適pH価は3.8~4.5に指摘された.この酵素は粗酵素液のときは加熱に安定であったが,精製されるとぎは70°, 10分の処理で失活した. Al+++, Fe+++による阻害作用は認められなかった.テンサイアラバンの分解は30°で120時間作用後に80.2%に達した.分解率30%までは直線的に反応が進行し,反応初期よリアラビノースの生成を認めた.
  • 細菌によるデヒドロ酢酸分解生成物, triacetic acid lactoneおよびtriacetic acid
    小谷 隆, 野々村 誠一, 辰巳 忠次
    1964 年 38 巻 12 号 p. 585-589
    発行日: 1964年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
  • ストレプトマイシン耐性グルタミン酸生産菌について
    広瀬 義夫, 中村 淳二, 岡田 弘, 角田 俊直
    1964 年 38 巻 12 号 p. 590-594
    発行日: 1964年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    Brevibacterium lactofermentumに属する1菌株のストレプトマイシン耐性獲得に伴う諸性質の変化を検討した.その結果,次の諸点が明らかになった.
    (1) 感受性菌の約1万倍の耐性をもつ耐性菌はストレプトマイシン依存性でない.
    (2) 実用上支障をきたすほど高い頻度の耐性復帰は起り難い.
    (3) 形態的な変化は認められない.
    (4) ウレアーゼ活性が低下する他菌学的な大きな変化は認められない.
    (5) ビオチン要求性が低下している.
    (6) ビタミンB1を新たに要求する.この変化は供試した菌株に特異的である.
    (7) 耐性菌によるグルタミン酸発酵は円滑に進行する.
  • 香気捕集技術としてのSweep法について
    西条 了康, 桑原 穆夫
    1964 年 38 巻 12 号 p. 595-598
    発行日: 1964年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    紅茶香気の捕集方法としてsweep gasを用いる方法に注目し,香気捕集装置と操作条件を設定した.すなわち,紅茶1kgを20lの熱湯で抽出し,抽出液に7時間窒素ガスを吹き込み,それに伴なって出てくる紅茶の香気を-85°下のエーテルに吸収させた.次にこのエーテルを37~38°のゆるやかな条件下で留去し,約10mgの香気成分を液体状で得た.この試料につきガスクロマトグラフィーを実施したところ,上級品に比較的多いものとしてtR/tR(リナロール100としての相対保持時間)=25.8, 100.1があり,並級品,下級品に比較的多いものとしてtR/tR=32.2, 113.9, 134.3, 180.8などがあった.
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