日本農芸化学会誌
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廃糖蜜によるL-グルタミン酸醗酵(第3報)
ポリオキシエチレン脂肪酸エステル系界面活性剤の存在必要時間の検討
渋川 満小松 謙一大沢 岳義山本 外男
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1964 年 38 巻 7 号 p. 323-327

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抄録

甜菜廃糖蜜を糖源とするL-GA生産菌Microbacterium ammoniaphilumによるL-GAの菌体外著量蓄積にはPOEFEの添加が必要であるが,その存在がL-GA著量蓄積のために必要とされる時間について検討した結果,
(1) POEFE(ノニオンS-6)はフラスコ段階において,添加濃度の如何によらず培地調製時添加が有効であり,培養3.5時間,すなわち培地上清中ビオチン残存量が1γ/l程度までの添加は, L-GA蓄積性への寄与に変りは認められなかったが,培養5時間以降は急速にL-GA蓄積への寄与性が低下し,特に9時間,すなわち菌体へのビオチン吸収終了後は極めて小さい.この現象はPOEFEの濃度を水溶性を保ちながら十分大きくしても変らない.これらのことは,フラスコ段階におけるL-GAの菌体外蓄積が培養7時間頃から始ることを考慮すれば, POEFEが単純な物理化学的な細胞膜透過性改善剤ではないと推定できる.
(2) 培地調製時に添加したPOEFEは,培養約4時間,すなわち培地上清中のビオチン残存量が約1γ/lまでは培地中に存在することが必要であるが,約7時間,すなわちビオチンの菌体への吸収が終了する時間以降は存在する必要は認められなかった.
(3) POEFEの添加時間及び存在必要時間を,従来L-GAの菌体外蓄積剤と認められているペニシリン及びCTABの最適添加時間と比較検討した結果,両者間の相異が明かとなり,両者のL-GA菌体外蓄積の機構は別個のものであることが推定される.
(4) ノニオンS-6添加量とO.D.の関係を検討し,さらにL-GA著量蓄積条件下で生菌数を測定し, L-GAを蓄積せしめる濃度においては,菌生育,増殖に対し阻害的であることは認められなかった.

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