1965 年 39 巻 10 号 p. 391-396
N-TFA-methyl esterの形でジペプチドをガスクロマトグラフで分離する方法は,条件を一定に保てば再現性はきわめて良好である.ジペプチドの種類とその相対保持量にはある簡単な規則性が存在する.一方にれを利用して,オリゴペプチドの部分的加水分解によって得られるジペプチドを分離同定し,その結果からそのアミノ酸配列を簡単に確認,あるいはさらに決定することができる.これをgramicidine J1を用いて示し,この方法によってもgramicidine J1はgramicidine Sと同一物であることが結論できることを示した.複雑なアミノ酸を含む配列の場合,ガスクロマトグラフで分離困難なジペプチドの組合わせがある場合にはもちろん適用の限界はあるが,微量の試料を用いて,その配列に関して迅速に知見を求めるには有効な方法である.またこの方法によれば,ペプチド鎖中のD-アミノ酸の存在も検知することのできる場合もある.