日本農芸化学会誌
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定常熱伝導系の微生物学への応用(第3報)
温度勾配培養法による低,中および高温菌の同時分別分離
中江 利孝中西 武雄
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1967 年 41 巻 1 号 p. 8-12

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抄録

上下方向の定常熱伝導下の温度勾配培養装置を用いて,検体からの低,中および高温菌の同時分別分離の可能性に検討を加えた.分離操作において,混合菌株を含む寒天培地は細長い培養管内でその長さ方向の温度勾配下で培養された.菌濃度の高いStr. cremorisStr. thermophilusまたはB. subtilisPseudomonas sp.を2種混合したものは60°~6°, 18時間の温度勾配培養により,それぞれ適温付近に相当する培養管上の位置の密集集落帯から純粋株を分別分離できた.さらに, Str. lacticを加えた3種混合菌株の乳酸菌では,相互に共通の発育温度域を有するが,培養後分離すべき時期の選定によって分別分離が可能であった.実際に検体として生乳の希釈試料を用いた場合,培養温度20°, 38°および45°の相当位置から低,中および高温菌株をそれぞれ同時に分別分離できた.生乳検体はさらに,従来の生菌数測定法に準じた希釈濃度の下で発育温度範囲別の生菌数が測定された.この数値は従来の一定培養温度下の生菌数よりもいっそう正確な検体の微生物学的品質を反映させた値といえよう.

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