日本農芸化学会誌
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有機りん殺菌剤キタジンの作用機作に関する研究(第1報)
いもち病菌菌糸呼吸系,蛋白質,核酸,細胞壁の合成系,細胞内容物の漏出におよぼす影響
柿木 和雄前田 泰三阿部 洋見里 朝正
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1969 年 43 巻 1 号 p. 37-44

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抄録

有機りん殺菌剤キタジン(O,O'-diethyl-S-benzyl-thiophosphate)のいもち病菌菌糸生育阻害作用機作に関する研究を行ない,次の結果が得られた.
(1) キタジンはいもち病菌菌糸の呼吸系に対してほとんど影響を与えなかった.
(2) いもち病菌菌糸の蛋白質,核酸の合成系に対するキタジンの影響を14C-アミノ酸混合物,32P-りん酸を用いて各分画への取込み実験により検討した結果,いずれの場合にも阻害作用を認めなかった.
(3) キタジン処理菌糸をスライドグラス上で培養し,顕微鏡下で観察の結果,菌糸先端に膨潤現象を認めた.
(4) 14C-アミノ酸混合物,14P-りん酸を用いて菌体内容物の漏出現象を検討した結果,キタジン500 ppmにより無処理の約3~4倍の漏出が認められた.
(5) 14C-グルコース,14C-グルコサミンの細胞壁への取込みに及ぼすキタジンの影響について検討した結果,14C-グルコースの取込みはあまり大きく阻害されなかったが,14C-グルコサミンの取込みは静菌濃度で70~80%の阻害がみられた.このことより,キタジンのいもち病菌菌糸生育阻害の作用点の1つとして細胞壁合成系,とくにキチン合成系に関連した点が考えられる.

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