日本農芸化学会誌
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米粒中のblasticidin-Sの残留分析法
高木 幸太郎小島 利治渋谷 国豊江幡 栄一小泉 鶴雄岸田 弘
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1970 年 44 巻 11 号 p. 512-518

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抄録

(1) Bla-Sがそのままの形で残留しているものを定量することを目的とし,抽出,精製を通してBla-Sが分解しない条件を設定した.
(2) Bla-Sの定量はBla-Sに選択的に感受性を有する被検菌Cladosporium fulvumを用いる生物検定法によった.
(3) 玄米粉よりの抽出に当っては, Bla-Sが窒素を含みかつ水溶性であることに着目して,窒素量を測ることにより水による抽出条件を選んだ.
(4) 抽出率は3倍量の水を用いpH 4.5, 50°Cとし,α-amylase (Kleistase M-16)を1%添加して2回抽出する方法が最も効果的であった.
(5) 精製にはイオン交換樹脂を用い,溶存するBla-Sがごく微量であることから,低架橋度で交換速度が速く親和性が強いDowex 50W X-2の100~200 meshのものを選んだ.
(6) 抽出液のpHを2.0に下げ,樹脂の交換容量と抽出液の陽イオン量から,樹脂容積の20倍量を通液した.
(7) 樹脂に吸着したBla-Sは2N以下の塩酸ではほとんど溶出されないので塩酸洗浄によって吸着性の弱い夾雑物だけを除去することができた.
(8) 溶出剤としてのアンモニア水溶液は,その濃度が高くなるにつれて溶出率が低下するので,濃縮時間および安定性を考慮して0.1Nとした.
(9) モデル試験によると,本方法の回収率は60~80%で,検出限度は0.05ppmであった.
(10) 日本各地の玄米数点を分析した結果はすべて阻止円を示さず,検出限度以下であった.

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