1972 年 46 巻 4 号 p. 191-195
培地のpHを7.0付近に経時的に調節して培養した場合と,調節しない場合とでは菌の発育,糖の消費量ともに前者の方が多かったが,その場合のL-グルタミン酸脱炭酸酵素活性は,後者の方がかなり高く,またグルタミン酸の消費も後者の方が大であった.すなわち,L-グルタミン酸脱炭酸酵素活性は, pHの低下によって上昇し,逆にpHが高いと低下することが認められた.また,モデル実験においては,乳酸にγ-アミノ酪酸を添加することによって明らかなpHの上昇がみられたが,これは乳酸とγ-アミノ酪酸が,なんらかの形で結合した結果と思われる.さらに,実際の培養液中の乳酸のほとんどが結合型であるという結果と併せて,本酵素の生理的役割のその1つが,培養液の中和作用であるものと考えられた.