1972 年 46 巻 7 号 p. 323-329
(1)テンペイ製造に使用されるRhizopus oligosporusの菌体水抽出液を硫安分画した粗酵素をゲニスチンに作用させて,生成するゲニステインを溶血テストを用いて調べた結果,酵素反応液中のゲニステイン量と溶血防止力とはほぼ相関し,本酵素標品中にはゲニスチンの水解に関与するβ-グルコシダーゼの存在することが認められた.
(2)本酵素の性質を明らかにするために,アセトン分別沈殿, Amberlite CG-50カラムクロマトグラフィー,コロジオンバッグによる濃縮法により精製し,約1400倍に純化された酵素を43%の収率で得た.
(3)この精製酵素の諸性質を検討した結果,最適pHは5.0であり, pH安定性はPH 2~9で比較的広範囲にわたっていた.至適温度は60°Cで,それ以上でいちじるしい活性の低下が認められた.また重金属やSH試薬で阻害され,システインにより賦活されることから, SH酵素であることが示唆された.
(4)各基質について,ミハエリス定数Kmを求めた結果,ゲニスチンに対するKm=6.25×10-5M, NPGに対するKm=1.98×10-4M,フェニールβ-D-グルコシドに対するKm=4.57×10-4M,アルブチンに対するKm=6.72×10-4Mで,イソフラボン配糖体のゲニスチンに対する親和力が,用いた他のいずれの基質に対するよりも,大であることを認めた.
(5)この酵素はメチルα-D-グルコシドに作用しないことから,β-グルコシド結合を特異的に切断するβ-グルコシダーゼであることを認めた.