日本農芸化学会誌
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シロネズミにおける種々の臓器および組織へのシリアチン (2-アミノエチルホスホン酸)の取り込み
長谷川 信玉利 正人亀高 正夫
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1973 年 47 巻 11 号 p. 673-680

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抄録

テトラヒメナにより生合成された32P-シリアチンを成長中のシロネズミの腹腔内に1回投与し,種々の臓器および組織へのシリアチンの取り込みを調べ,特にその取り込み量が多かった肝臓について,シリアチンの取り込みの経時的変化を明らかにし,さらに長期間シリアチンを連続経口投与し,種々の臓器および組織へのシリアチンの貯留およびその生理的効果を調べた.
(1) シリアチンは,ほとんどすべての臓器および組織へ取り込まれ,なかでも肝臓が最も多く,ついで腎臓,小腸,後肢筋,後肢骨の順で,それぞれ投与量の17.5%, 1.23%, 0.20%, 0.07%, 0.06%であった.湿組織単位重量当りの取り込みは,湿総織全重量当りの取り込みと同様,肝臓が最も高かった.
(2) 肝藏へのシリアチンの取り込みは,投与4時間後が最も高く,それ以後は時間の経過とともに漸次減少したが,投与128時間後でも,投与量の58%が存在していた.またC-32P/T-32P(%)は,投与64時間以後むしろ高くなっていく傾向が見られた.これらのことからシリアチンは肝臓へ取り込まれるのみならず,なんらかの変化を受けない限り,貯留されやすい性質を持つことが推測される.
シリアチンの取り込み量が最も多かった投与4時間後の肝臓と,投与128時間後の肝臓の各種リン画分について,肝臓全体のC-32Pに対するそれぞれのC-32Pの百分率を見ると,投与128時間後の酸性画分の値が,投与4時間後のそれに比べて,かなり減少しているのに対して,脂質画分や蛋白質画分では逆に増加の傾向が見られた.さらに,各種リン画分のC-32P/T-32P(%)を見ると,投与128時間後では核酸画分を除いて,投与4時間後に比べていずれも高い値が示された.これらのことから,肝臓におけるシリアチンは,最初主として酸可溶性画分に取り込まれ,時間が経過すると他の画分,特に脂質画分へ取り込まれていくことが明らかにされた.
(3) シリアチンをかなり多量に連続経口投与しても,みかけ上毒性が現われず,むしろ普通のリン化合物の一部を代替する効果をもつことが認められた.この実験でシリアチンは,肝臓をはじめ種々の臓器および組織にかなり高い濃度で貯留され,特に肝臓においては,脂質画分に多く含まれることが判明した.

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