日本農芸化学会誌
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小麦粉脂の質の成分,分布および機能
平山 修松田 英幸岡村 紀子藤井 慶子
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1973 年 47 巻 7 号 p. 407-413

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抄録

小麦粉のリン脂質および糖脂質の各成分を分離,同定,定量した.特異成分としてN-アシルホスファチジルエタノールアミン,アシルモノガラクトシルジグリセリドなどの存在を認めた.強力粉脂質は薄力粉脂質に比較して,高いリン脂質含量を示した.
次に,強力粉を水および希酢酸で抽出することによって,水溶性画分,灘酸可溶性画分(グルテン),スラッジ画分およびデンプン粒画分に分け,脂質分布を調べた.
グルテンには全脂質の約80%が存在し,そしてグルテニンには非極性脂質が,グリアジンには極性脂質が優先分布する傾向を示した.グルテンの極性脂質は糖脂質量に富むのに対し,スラッジおよびデンプン粒画分の脂質は,リン脂質とくにリゾレシチンに富んでいた.またデンプン粒の内部には,遊離脂肪酸,リゾレシチンを主成分とする脂質の存在が認められた.
他方,強力粉を等張のもとに界面活性剤で分散抽出し,これを密度勾配遠心によって分別すると, 0.5~0.6μのタンパク顆粒が得られた,この顆粒は,全タンパク質の約65%および全脂質の約70%を含んでいた.薄力粉においては,上記顆粒以外に0.6~1.0μの顆粒も認められた.
強力粉グルテンはグルテニン量に富み,薄力粉グルテンはグリアジン量に富んでいた.さらに,このグルテン組成は脱脂することによって大きく変化することが,ゲル濾過の結果から認められた.以上の結果および他のデータから,グルテン形成において脂質はグルテンタンパク質の高分子化に寄与していることを推察した.

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