1975 年 49 巻 9 号 p. 455-461
フコイダン様多糖の分布を知るため, 21種の褐藻について熱水易抽出性の硫酸多糖の収量,硫酸多糖のフコース,ウロン酸,硫酸の含量,電気泳動上の性質を調べた.
硫酸多糖の含量は,痕跡程度のものから10数%まで変化が多い.多くのものは,数%から10%以内であった.
フコースはすべての多糖標品から見出され,含量は,多くは10~40%の範囲にあるが,例外的に小さいもの(チガイソの胞子葉部, 2.3%)もあった.またフコース:硫酸が1:2(モル比)以上のものがかなりあり,糖の構成がフコイダンとは異なった硫酸多糖の存在が考えられた.
セルロースアセテート膜上の電気泳動では,大部分のものが3~6cmの移動距離を示し, 2~3スポットに分かれたものが約半数を占めた.しかしフトモズク,マツモ,チガイソの硫酸多糖は,大きく異なった挙動を示した.
系統分類上からみると,ナガマツモ目(5種),コンブ目中コンブ属(3種),トロロコンブ属(1種)の硫酸多糖は,ウロン酸が少なくフコースと硫酸が多いことから,比較的構成の簡単なフカン硫酸と考えられるのに反し,上記2属以外のコンブ科およびヒバマタ目の硫酸多糖は複雑であることが示唆された.