日本農芸化学会誌
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アデニンー銅触媒によるノルアドレナリンの酸化反応機構
村上 浩紀白畑 実隆山田 耕路大村 浩久
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1975 年 49 巻 9 号 p. 475-479

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抄録

核酸成分によるCu2+共存下での芳香族レダクトンの酸化促進作用を解明するために,最も促進効果の著しいアデニンの作用をアデニン-Cu2+-ノルアドレナリンの系で反応速度論的にしらべた.
1. Cu2+共存下でのアデニンによるノルアドレナリンの酸化促進効果において,窒素ガスの通気による溶存酸素の除去の影響は反応初期にはあらわれなかったが,その後,反応が進むにつれてノルアドレナリンの酸化は抑制された.
2. 窒素ガス通気中での初期の酸化反応は,典型的なMichaelis-Menten型の挙動を示した.すなわち,アデニンおよびノルアドレナリンがたがいに独立に,またどの順序ででもCu2+に結合でき,アデニン-Cu2+-ノルアドナリン混合錯体の形成を経て,ノルアドレナリンが酸化される無順序系遂次型機構に従うことが反応速度論的に明らかとなった.また, 2つの混合錯体の生成経路のうち, Cu2+にまずノルアドナリンが配位し,次にアデニンが配位する経路に平衡が傾いていることが,実験的に決定された平衡定数から推定された.一方, Cu2+を介してo-ジフェノールと同様な混合錯体を形成する2, 2'-ビピリジンは,ノルアドレナリンの酸化を促進せず,むしろ抑制した.このことから,核酸成分の効果は2, 2'-ビピリジンとは異なった性質にもとづくことが考えられた.

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