1976 年 50 巻 12 号 p. 577-584
ワカメの硫酸多糖ガラクトフカン硫酸の構造研究に利用するために,アワビ肝膵臓中に含まれる分解酵素を検討した.
得られた粗酵素からは,ガラクトフカナーゼとα-L-フコシダーゼのほか,ガラクトフカンスルファターゼ,アリルスルファターゼ, β-D-ガラクトシダーゼが検出された.この粗酵素をDEAE-セルロースとセファデックスG-200を用いて分画することにより,ガラクトフカン硫酸に作用しないα-L-フコシダーゼ画分(FS-1)と, α-L-フコシダーゼ活性をもたないで,ガラクトフカナーゼ,ガラクトフカンスルファターゼ,アリルスルファターゼ,ブコイダナーゼの4活性を示す画分(FS-2)とが得られた. FS-1は,部分分解されたガラクトフカン硫酸に対しては活性を示し,かつα-L-フコシダーゼにはガラクトフカン硫酸により阻害される酵素(至適pH 3)と阻害されない酵素(至適pH 5)の2成分が認められた.
以上の結果より, FS-1のα-L-フコシダーゼは基質特異性を利用して,またFS-2のガラクトフカナーゼは都分分解の手段として,フコイダン様多糖の構造研究に有用であろうと考えられる.