抄録
カラギーナン水溶液の粘度挙動および水ゲルの物性について,寒天との比較検討を行ない,以下のような結果を得た.
1. 二重円筒形回転粘度計を用いて測定した水溶液の粘度は,いずれも,速度勾配が小さいほど粘度が大きくなるという典型的な構造粘性を示した.濃度依存性では高分子電解質特有の挙動を示し,還元粘度の最小値は, 2種のカラギーナンでは0.3よび0.5%,寒天は0.1%において認められた.
また,温度依存性から,みかけの活性化エネルギーを求めたところ, 2種の1%カラギーナン水溶液は3.79と4.94kcal/mol,寒天水溶液は6.16kcal/molであった.
2. カラギーナンゲルの離漿量はいずれも寒天に比べてかなり少ないことが認められた.また,電子レンジを用いて,ゲルの乾燥曲線を求めたところ,カラギーナンゲルと寒天ゲルの水の結合状態の違いを推測することができた.
3. 圧縮型平行板粘弾性計を用いて測定した1.5%ゲルのクリープ曲線は,フックの弾性体, 2組のフォークトの粘弾性体およびニュートン粘性体の6要素模型で示すことができ,弾性率は105~106dyn/cm2,粘性率は107~109poiseであった.カラギーナンゲルの方が,いずれもやや小さい値であった.
4. ゲルの網目構造を走査型電子顕微鏡で観察したところ,カラギーナンゲルの網目構造は,割にあらく,スポンジ状であるが,寒天ゲルは,繊維状分子が密にからみ合っているのが認められた.