抄録
(1) 清酒乳酸菌L. sakeのF 16-2耐性変異株の検索を行い数株を得た.得られた耐性株は親株と同様の性質を示し,酵母のF 16-2耐性株との併用は,生もと系酒母を安全に保つ一手段であることを示唆した.
(2) 酵母のF 16-2耐性株の検索を行い数株を得た.協会7号酵母から得られた耐性株7-2は親株と同様の性質を示した. F 16-2添加麹汁培地で耐性株7-2を培養すると正常な増殖を示し,培地に添加したF 16-2の減少はなかった.
(3) 電子顕微鏡により協会7号酵母のF 16-2耐性株7-2を観察した.協会7号酵母はF 16-2により阻害を受けて,形態異常を生じたが,耐性株7-2はF 16-2による形態異常は認められなかった.
(4) 協会7号酵母のF 16-2耐性株7-2を用いて発酵試験を行った.正常なもろみでは,親株協会7号酵母と同じ発酵経過をたどり,生成アルコールの最終濃度も同じであった. F 16-2添加もろみでは親株を用いた場合は発酵が緩慢となり,生成アルコール量も低下したが,耐性株7-2を用いると正常な発酵経過をたどり,生成アルコールの最終濃度は20.0%に達した.安定した発酵経過を保つ一方法としてF 16-2耐性株7-2を利用できると考察した.