日本農芸化学会誌
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芳香環レダクトンによるホモポリリボヌクレオチド鎖の切断と核酸塩基による調節
白畑 実隆村上 浩紀山田 耕路大村 浩久
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1982 年 56 巻 11 号 p. 1027-1035

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抄録

芳香環レダクトンによるポリリボヌクシオチドの切断反応をゲル電気泳動法を用いて検討した.
Cu2+共存下での芳香環レダクトンのポリC切断能を比較したところ,エピネフリンが最も強く,次いでドーパミン,ノルエピネフリン,ピロカテコールおよびドーパの順に弱くなった.アドレノクロームは全く切断力を持たなかった.芳香環レダクトンーCu2+混液処理により生成するホモポリリボヌクレオチド断片の分子量分布のパターンから芳香環レダクトンによるホモポリリボヌクレオチド鎖の切断はランダムに生じることが推定された.
エピネフリン-Cu2+混液によるポリC切断数は経時的に増加した.またエピネフリン濃度およびCu2+濃度に依存して切断反応は著しく強まった.切断はCu2+なしには全く生じなかった.切断反応はpH 7で最もよく起り,醸性およびアルカリ性のいずれのpHでも弱まった.各種金属イオンの中ではCu2+が圧倒的に強い切断促進能を持ち,Ni2+,Co2+,Mg2+およびFe3+に弱い効果が認められたが,Fe2+,Mn2+,Zn2+およびPb2+では検出しうる程度の効果はみられなかった.エピネフリン-Cu2+混液によりいずれのホモポリヌクレオチドも切断されたが,その程度はポリC,ポリU,ポリAおよびポリGの順に弱まった.この傾向は反応後期のエピネフリンの酸化程度と一致した.
エピネフリン-Cu2+混液によるポリCの切断はシトシンあるいはアデニンの共存により抑制された.このことから核酸成分がGu2+共存下に芳香環レダクトンの酸化反応を調節することにより切断反応をも調節しうることが示唆された.

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