日本農芸化学会誌
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腸内細菌によるaflatoxin B1分解の機序に関する研究
伊藤 嘉典森下 芳行栗飯原 景昭
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1982 年 56 巻 11 号 p. 1043-1048

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抄録

1) 腸内細菌の増殖とAflatoxin B1(AF B1)の分解にっいて,AF B,添加培地でProteus mirabilisY2+Streptococcus sp.Y5組合せ培養を行い検討した結果,AF B1の分解は細菌増殖速度の大きい対数期ではなく,定常期の後半で認められ,48時間培養で31%,72時間培養で54%の分解率であった.
2) AF B1の分解が生じる本体を明らかにするために,AF B1抽出過程をクロロホルム抽出(Step I)と抽出完了(Step II)の2段階に分け,フローラCをAF B1添加培地で72時間培養した試料とAF B1無添加培地で72時間培養後,培養液にAF B1を添加した試料で検討した結果,AF B1分解率は常にStep IよりもStep IIのほうが高く,明らかな差を認めた.両試料のStep IIでのAF B1分解率はほぼ同一値であった.
3) フローラCのAF B1分解能が低下していることから,新たに7種の腸内フローラ(E~K)を分離し,再度AF B1抽出過程の検討を行った結果,フローラHとKにおいて,Step IIでのAF B1分解率がStep Iよりも高いことを確認した.
4) AF B1の分解に関与する物質がどこに存在するかを明らかにするために,フローラH,I,KおよびE coliY8を72時間培養後,菌体と培養濾液に分け,おのおののクロロホルム抽出物によるAF B1分解を,クロロホルム抽出物とAF B1の短時間接触(Process A)とそれを濃縮したもの(Process B)について検討した結果,全供試菌の菌体抽出物でAF B1分解はProcess AとBとも認められない.一方,培養濾液拙出物による分解はフローラHとKのProcess Aで50%以上,Process Bで90%以上のAF B1分解を認めた.
以上の結果から,特定の腸内フロラによるAF B1の分解は,腸内細菌の代謝産物が関与する間接的な分解と結論した.現在,その本態について引続き検討中である.

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