L-リジンの生合成のキー・エンザイムであるアスパルトキナーゼはL-LysとL-Thrにより協奏阻害を受ける.その阻害を軽減するためにセルフリ-系,休止細胞系および増殖細胞系に透析反応および透析培養を応用し,以下の結果を得た.
(1) QL-5のアスパルトキナーゼはL-LysとL-Thrにより協奏阻害を受け,その阻害はおのおの1mMずつで59%,また,おのおの5mMずつで87%であつた.この協奏阻害は,透析することによりそれぞれ約40%,約80%に軽減された.
(2) 休止細胞においても同様に協奏阻害が認められ,その阻害はおのおの1mM, 5mMまたは10mMずつの同時添加で,それぞれ35%, 75%および81%であったが,試作した透析用振盪フラスコを用いて透析することにより,それぞれ12%, 70%および75%まで阻害が軽減された.
(3) 増殖細胞を用いて10%, 15%および20%グルコース濃度で透析培養を行ったところ,いずれの場合も非透析培養に比べて,菌の生育速度が速くなり,菌体量も多くなった.また,いずれの糖濃度でも, L-リジン生産時期が早くなり, L-リジンの最大生産速度(1.50g/l/h)は6~10時間目で得られ,同じ時期の非透析培養のそれの2~6倍であり, L-リジン生産量は,非透析培養に比べて,それぞれ約5%, 20%および26%の増収が認められた.消費糖当りのL-リジンの収率は,非透所培養では糖濃度の上昇に伴って減少したが,透析培養を行ったものでは20%グルコースでも10%グルコースの場合と変らず約30%であった.