日本農芸化学会誌
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大豆リゾリン脂質の界面活性の研究(第1報) ―水溶液の性質,湿潤と浸透作用―
藤田 哲鈴木 一昭
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1990 年 64 巻 8 号 p. 1355-1360

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抄録

大豆リン脂質(SP)を,ホスフォリパーゼA2で加水分解して得られるリゾリン脂質(SLP), SLPを含水アルコールで抽出して得られるリゾホスファチジルコリン(LPC)について界面活性作用を調べた.またSLP/SP,LPC/ホスファチジルコリン(PC)の混合物について,モノ・ジアシル体含有量比の変化が,それらの水溶液の界面活性と酸,食塩に対する安定性に及ぼす影響について調べた.
(1) リゾリン脂質(LP)の増加によって,表面張力低下,付着ぬれの活性は増大したが,浸透ぬれ活性は一旦低下の後に増大した.乳化法で測ったHLBはLPCで17.5であり, SLP, LPCはショ糖脂肪酸エステルよりさらに広い親水性領域をカバーする界面活性剤として利用でぎる.
(2) SPおよびPCの水溶液は酸,食塩で凝集沈殿するが, LPC/PC混合物の水溶液は酸性,食塩の影響を受けにくい. SLP/SP混合物の水溶液は酸性下で安定であるが,食塩には不安定で,LPが50重量%以下では沈殿を生じ,80%では濁度が増加する. SLP中にLPC含量が増加すると食塩に対しても安定になり,LPCが50重量%程度以上で食塩の影響を受けにくくなる.

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