2012 年 84 巻 1 号 p. 15-31
本稿の課題は,現局面における米生産者直販の展開論理を明らかにするとともに,マクロ的に見た直販停滞についての示唆を得ることである.本稿では,米需要構造の動きと経営の生産力構造に注目するとともに,茨城県筑西市田谷川地区の事例から課題に接近する.本稿の結論は以下のとおりである.2000年代以降,中食・外食需要へ対応するために,取引ロットの大規模化による流通コストのカットと販売価格の抑制が求められた.また,生産力構造の高度化が,直販を可能にするとともに必要とされた.本稿の分析により,現局面では本格的に直販に取り組める水田作経営は限られてきていることが示唆された.