2013 年 85 巻 3 号 p. 187-192
本稿は,第28回国際農業経済学会(IAAE)ブラジル大会における発表論文を対象として,過去のIAAE大会と比較することでその研究動向をレビューした.IAAE大会は,最も大きい農業経済学の大会であることから,世界的な研究動向を把握することができる.本稿では,IAAE日本人会長が今大会を統括するという記念すべき大会であったことから,今後の我が国農業経済学会にとっての意義についても考察した.本稿での考察から得られた知見は以下の通りである.1)今大会では口頭報告数が減少して,ポスター報告論文数が増加したことで,若手研究者への参加を促す効果を有している.2)開発経済学と資源・環境経済学の分野での口頭報告セッション数が増加し,全体の半数を占めていた.特に,資源・環境経済学の分野では,トピック数が増加している.また,市場分析関係も2割のシェアを占めるまでに増加した.総じて,農業経済学の対象分野が伝統的な生産経済学の分野から拡大しており,農村資源マネジメントの経済学へ向かっていることを理解できる.