抄録
本稿の目的はコメ販売における競争力に影響を及ぼす諸要素を明らかにすることである.そのために,品質という視点からこれまでのコメ流通の歴史を振り返った.その結果,かつての食管制度下では等級以外に,産地・品種によるグレーディングが行われていたため,現在でもその意識が生産サイドのみならず消費者にも残存しているが,実需者段階では多様な「品質」が必要とされていることを明らかにした.また,国際的な競争を前提にすれば,本来の品質面での向上が求められるが,それに対応するための農業労働力の脆弱化が深刻な問題であることを指摘した.