2016 年 88 巻 1 号 p. 99-114
本稿では,農地・水・環境保全向上対策について,農林水産省が行ってきた政策評価の枠組みと,インパクト評価手法による統計解析の結果を提示し,後継対策である多面的機能支払への展望について論じた.向上対策の効果推定の結果,共同活動支援では農業集落の活動および地域資源の保全活動には効果が認められたものの,田の不作付地を除く農地の保全管理については,ほとんど効果が認められなかった.営農活動支援では,ほぼすべての成果指標で効果を見出すことができなかった.将来における多面的機能支払の評価においては,エビデンスに基づく政策評価実施のために,施策の効果が測定可能な定量的な目標の設定が必要である.