2019 年 91 巻 2 号 p. 146-163
新基本法の策定経緯と目指した姿を振り返り,その後20年の農政をレビューするとともに,主な政策に係る農林水産政策研究所の研究成果を紹介した.新基本法は,食料・農業・農村を一体的なものとしてとらえ,具体的な施策展開のプログラムを基本計画とすることで,経済社会の情勢に応じた施策展開を機動的に実行する仕組みが構築されたことに大きな意義がある.基本計画において示された施策の方向に基づき,具体的な法制度,予算的な措置が講じられてきており,食の外部化に対応した生産の進展,担い手への施策の集中,経営安定対策,中山間地域等直接支払などが着実に効果を上げていることが明らかとなった.一方で,解決されていない課題もある.食料自給率は向上したとは言い難く,食料自給率のあり方,供給熱量ベースの自給率の位置づけは議論を深めていく必要がある.食料自給力指標は国民が自らの食料について考えるための一助となるように,指標の取り方や表現方法も含めて改善を行う必要がある.農業構造の展望は,施策を展開する上でも引き続き示すことが重要であるが,農業経営の展望等は,国がいくつかのモデル的な典型例を掲げて施策を推進することの妥当性を検討する必要がある.