新基本法制定の議論が行われた1990年代は, 世界的に環境問題が注目された時代でもある.1992年の地球サミット後,1993年には日本でも環境基本法が制定され,国民の共生と参加による環境政策が推進された.新基本法の理念である農業の多面的機能の評価も,この環境政策に連なる.農業・農村の食料供給機能のほか,景観,ダム機能,生物多様性の保護等に果たす役割を,国民全体で再評価する枠組みとして環境問題があった.一方,新基本法制定後,BSEや東京電力福島第一原子力発電所の事故による放射能汚染など,食の安全性の問題が頻発した.新基本法制定からの20年のキーワードは環境問題と安全問題であるといえる.