2020 年 92 巻 3 号 p. 238-252
2040年までに持続可能な社会へ移行するために,日本ではどのような農業経営体によるどのような農業を目指すべきか.そのための政策とはどのようなものであるべきか.本稿は,国連やEUにおける農業政策の新潮流と政策思想の変遷をふまえて,日本における持続可能な社会に資する新たな農業経営体像を展望するため,4つのシナリオを検討する.結論として,農業に対する新たな社会的要請に応えることができるアグロエコロジーの推進,資源・エネルギー効率性という新たな経営の評価基準で優位性を発揮する小規模・家族経営の支援,小規模・分散型の生産・消費システムの構築という政策を提示する.