2020 年 92 巻 3 号 p. 253-261
本シンポジウムが射程とする2040年には,田園回帰の動きを牽引した団塊ジュニア世代が高齢者となり,農村と都市の双方で豊かなライフスタイルを享受する都市農村対流時代が想定される.その時点での農村像を描き出すとき,4つのシナリオが想定され,社会インフラ技術が小規模化でき,SDGsの理念が国民に共有され,社会変革が進められる条件が揃った「地方分散シナリオ」を選択できれば,持続可能性がより高まるだろう.今日各地で見られるローカルプロジェクトは,その萌芽的な動きといえよう.旧来の計画や制度の更新とは別の形で,農村の暮らしを基点とし価値創造を生み出す地方分散シナリオを実現できるプロセスの検討を今から始めるべきである.