抄録
本研究の目的は,矯正施設等を退所した知的障害者を先駆的に受入れていた障害者支援施設の受入れ方針と支援課題を明らかにすることであった.方法は,平成22年度に当法人が旧知的障害者入所更生施設,旧知的障害者入所授産施設に対して行った全国調査の回答者の中から,今回の調査対象に該当する9施設を選定し,聞き取り調査を行った.調査結果からは,①措置制度の下で既に受入れを行なっていたこと,②受入れに関する意思決定は最小限の人数で行なっていたこと,③様々な機関と連携を図ったこと,④他害や無断外出・外泊がある人の受入れは躊躇することが分かった.受入れ経験から生じた課題として,他の利用者との障害程度の乖離,施設プログラムへの不適合,職員の過剰負担,強制力と人権擁護のジレンマ,無断外出・外泊への対応,地域との連携不足,入所者の事前情報不足があげられた.