国立のぞみの園紀要
Online ISSN : 2435-0494
5 巻
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  • ―行動援護を中心に―
    村岡 美幸, 志賀 利一, 相馬 大祐, 木下 大生, 田中 正博
    2012 年 5 巻 p. 1-11
    発行日: 2012年
    公開日: 2022/12/31
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    本研究では,行動援護サービスが創設されてから6年が経過した現時点での,行動援護の利用者像と行動援護が果たしている役割について考察した.方法は,行動援護事業所を対象に,平成22年度の契約状況,行動援護契約者の障害程度区分と行動関連項目の点数,利用事例等を,葉書,メール,電話,面接にて調査した.今回の調査から行動援護は,大きく3つのタイプの利用者像があることがわかった.それは,①家族が包括的かつ比較的長時間支援を行っている重度あるいは行動障害のある知的障害児者,②一人親あるいは経済的理由等で支援の時間が限られる行動障害のある知的障害児者,③行動障害の程度はやや軽易ではあるが家庭における支援に課題を抱える障害児者であった.また,重度あるいは行動障害のある知的障害児者の在宅生活を支えるうえで行動援護が果たしている役割は,①家族のレスパイトと,②本人の生活の構築であることも確認できた.
  • ―日中活動の獲得に困難をきたした2事例を通して―
    村岡 美幸, 志賀 利一, 木下 大生, 相馬 大祐, 田中 正博
    2012 年 5 巻 p. 12-18
    発行日: 2012年
    公開日: 2022/12/31
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    昨年度実施した,7人の行動障害がある知的障害児者をもつ家族を対象としたヒアリング調査の継続研究として,本年度は新たに2人の家族にヒアリング調査を実施し,事例数を増やした上で,重度の知的障害児者が在宅生活を快適に暮らすために必要なサービスについて考察することとした.行動障害のある人が在宅で長期間生活するための要件は,「安定した日中活動」「家庭内の物理的構造化」「確固としたスケジュール」「ひとりで過ごせる活動」「移動手段と体制」の5つに整理できた.これらの要件のうち,どれかが不十分だと,在宅生活の危機を迎える.今回の2事例は,安定した日中活動の場が継続できなかったケースであった.一人は,3カ所目の事業所で安定した通所が続いており,もう一人は家族が独自に日中活動の場を作り出している.どちらも個室での対応・環境が必要不可欠であった.両事例とも,親の高齢化に備えた生活とサービス利用が課題だと考えている.
  • -地域生活移行の取組みについて-
    木下 大生, 小野 隆一, 水藤 昌彦, 大村 美保
    2012 年 5 巻 p. 19-27
    発行日: 2012年
    公開日: 2022/12/31
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    この研究の目的は,(旧)知的障害者入所更生施設,(旧)知的障害者入所授産施設における,矯正施設等を退所した知的障害者の地域生活移行支援の実態と方法を明らかにすることである.方法は,平成22年度に国立のぞみの園で行った全国調査で「矯正施設等を退所した人の受入れ経験がある」と回答した障害者支援施設の中から,第1次調査で地域生活移行の経験がある施設を抽出し,第2次調査で電話にてその方法をヒアリングした.その結果,矯正施設退所者で障害者支援施設に入所した人では33%が既に退所しており,全国の施設入所者の地域移行率3.5%と比べると相当に高い割合で施設から退所していた.ヒアリングでは,暮らしの場としては単身にてアパート生活,もしくは同一法人のグループホームやケアホームに移行しており,また障害者雇用に関する各種援助制度を使って一般就労に結びついている事例が多く見られた.今後は,現在も障害者支援施設に入所中,もしく再入所中である67%の人たちの利用者像を明らかにするとともに,矯正施設を退所した知的障害者の地域生活移行に対する障害者支援施設の意識が地域生活移行に及ぼす影響についても検討される必要がある.
  • ―受入れの経過と支援上の課題について-
    木下 大生, 水藤 昌彦, 小野 隆一, 五味 洋一
    2012 年 5 巻 p. 28-34
    発行日: 2012年
    公開日: 2022/12/31
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    本研究の目的は,矯正施設等を退所した知的障害者を先駆的に受入れていた障害者支援施設の受入れ方針と支援課題を明らかにすることであった.方法は,平成22年度に当法人が旧知的障害者入所更生施設,旧知的障害者入所授産施設に対して行った全国調査の回答者の中から,今回の調査対象に該当する9施設を選定し,聞き取り調査を行った.調査結果からは,①措置制度の下で既に受入れを行なっていたこと,②受入れに関する意思決定は最小限の人数で行なっていたこと,③様々な機関と連携を図ったこと,④他害や無断外出・外泊がある人の受入れは躊躇することが分かった.受入れ経験から生じた課題として,他の利用者との障害程度の乖離,施設プログラムへの不適合,職員の過剰負担,強制力と人権擁護のジレンマ,無断外出・外泊への対応,地域との連携不足,入所者の事前情報不足があげられた.
  • -社会福祉法人を対象とした調査結果から-
    相馬 大祐, 志賀 利一, 木下 大生, 村岡 美幸
    2012 年 5 巻 p. 35-48
    発行日: 2012年
    公開日: 2022/12/31
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    障害福祉計画に地域移行者数の数値目標が設定され,入所施設には地域移行の成果が求められている.のぞみの園では今まで,のぞみの園,関東甲信越地方の知的障害者入所施設を対象に地域移行のプロセスを明らかにすることを目的としたインタビュー調査を実施してきた.そこで,知的障害者入所施設を持つ社会福祉法人を対象にグループホーム・ケアホームへの移行の実態を明らかにするため,1,222の社会福祉法人を対象に郵送による質問紙調査を実施した.その結果,我が国の地域移行は入所施設と同一法人が運営するグループホーム・ケアホームへの移行が大多数を占めていることが分かった.この結果から,知的障害者入所施設の地域移行とは,社会福祉法人の運営姿勢によるところが大きいことが示唆された.
  • ―感度と特異度の検証を中心として―
    木下 大生, 有賀 道生, 上原 徹, 井沢 邦英, 村岡 美幸, 志賀 利一
    2012 年 5 巻 p. 49-62
    発行日: 2012年
    公開日: 2022/12/31
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    この研究の目的は,2007年にイギリスのDebらによって開発された,知的障害者用認知症判別尺度Dementia Questionnaire for Individuals with Intellectual Disabilities(DSQIID)の感度と特異度を検証することである.検証のため,「第1群」医師に認知症と診断されている知的障害者21人(歩行可能群12人,歩行不能群9人),「第2群」医師に非認知症と診断されている60歳以上の知的障害者12人,「第3群」40歳以下で強度行動障害がある知的障害者6人,を設定し感度と特異度を検証した.結果,第1群の感度は0.42で,原版の0.92と比較すると低かった.しかし,第1群を歩行可能群と歩行不能群に分けた場合,前者は0.75,後者は0.00であったことから,DSQIIDは歩行ができない人の感度が低いことが示唆された.一方特異度に関しては,第2群は0.91,第3群は1.00と高かった.今後は,DSQIIDを高齢知的障害者の実践現場に広く活用し,有効性を実証していく必要がある.
  • 志賀 利一, 木下 大生, 相馬 大祐, 村岡 美幸
    2012 年 5 巻 p. 63-74
    発行日: 2012年
    公開日: 2022/12/31
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    本研究は,療育手帳の交付を受けている人を対象に,精神科病院への入院治療の実態を調べることを目的とする.1府2県の8相談支援事業所にアンケート調査を実施し,どのような症状や社会的な支援環境のもとで入院に至ったか,その入院期間と入退院時における地域の福祉サービス機関との連携状況について,事例を通して探索的に調査した.入院の目的は,1)極端なこだわりからの生活立て直し,2)家族のレスパイト,3)本人の地域生活疲れ,4)パニック緊急対応が多く,多くは入院前に相談支援事業所と医療機関との間でカンファレンスを開催していた.概ね半数以上は,精神科病院の入院治療期間は短く,退院後の生活を見越して,入院前より医療・福祉の連携が持たれていた.一方,半年以上入院しているケースも一定数存在しており,治療抵抗性と同時に,退院後の生活環境整備の困難さが明らかなケースも存在した.医療機関と相談支援の連携をキーワードに,今後も調査研究を続ける必要がある.
  • -生活介護事業所「さんぽみち」の取組みについて-
    塚越 真二, 湯浅 智代, 小野 隆一
    2012 年 5 巻 p. 75-82
    発行日: 2012年
    公開日: 2022/12/31
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    本研究では,生活介護事業所「さんぽみち」の現在のサービス提供状況を通し,地域で生活する高齢知的障害者の日中活動のあり方について考察する.具体的には,利用者3人の利用スタイルと利用前後の様子の変化,事業を展開する上で大切にしていることに着目した.利用スタイルは,①毎日通所している人,②本体施設の生活介護との併用している人,③介護保険サービスの通所介護と併用している人,とそれぞれ異なっていた.利用後の変化としては,嬉しそうな表情が見られるようになった他,自分でメニューを選択し予定を立てながら生活している等,楽しみを持ちながら地域生活を送っている様子がうかがえた.また,地域で生活介護事業を展開する上では,講師の方の理解・調整,インフォーマルな社会資源の活用が欠かせないものとなっていた. 本研究の結果から,地域で生活する高齢知的障害者の日中活動のあり方として,利用者が活動内容や事業所,利用日を選びながら利用できるシステムの必要性がうかがえた.
  • ―のぞみの園利用者の診療記録から―
    井沢 邦英, 志賀 利一, 村岡 美幸, 五味 洋一, 相馬 大祐, 木下 大生, 大村 美保
    2012 年 5 巻 p. 83-88
    発行日: 2012年
    公開日: 2022/12/31
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    本研究は,国立のぞみの園利用者の診療記録をもとに高齢知的障害者の疾患についての情報を整理し,知的障害者の高齢化に対応した医療的ケアおよび予防的支援の方法を検討するための基礎資料を得ることを目的とした.調査対象は,1971~2011年度までに亡くなったのぞみの園利用者170人とした.死亡原因および疾患の状況等を整理したところ,高齢化に伴い死亡者数は年々増加しており,その死亡原因の40%以上を肺炎等の呼吸器系疾患が占めていることが明らかになった.一方,癌や脳血管性の疾患による死亡者は一般統計に比べて少数であった.死亡するまでに罹った疾患は,一人あたり平均で7.7であり,50歳未満では消化器系疾患が,50歳以上では脳・神経系の疾患や内分泌栄養及び代謝疾患,呼吸器系疾患が多かった.これらの結果から,特に50歳以上での呼吸器系疾患を予防するための口腔機能の評価やケアの必要性が示唆された.
  • 小池 千鶴子, 齋藤 史泰, 鈴江 美希, 有賀 道生
    2012 年 5 巻 p. 89-96
    発行日: 2012年
    公開日: 2022/12/31
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    当診療所では,心理外来利用の発達障害をもつ子どもたちの家族を対象にした心理教育のグループセッションを行っている.本研究は,第1から3期(それぞれ約半年間)までの選定されたテーマ,参加した家族のアンケート結果と精神健康度の評価から,発達障害をもつ子どもの家族への支援のあり方と今後の課題について検討することを目的とした.実施していく中で,関心のあるテーマが子どもの年齢層によって異なることから,第2期からは児童期グループ(幼児~小学4年生)と思春期グループ(小学5年生~中学3年生)の家族に分けて実施している.グループセッション時に選定されたテーマは,児童期グループでは日々の生活の中で生じることに関連した項目が多く,思春期グループでは社会的スキルに関連した項目が多いなど,年齢による相違がみられた.また,参加者からは現行の実施方法に肯定的な評価が大半であり,参加したことを評価する傾向にあった.さらに,参加している家族の精神健康度は,全般に低い結果であり,支援の必要性の高いことが分かった.
  • 杉田 祐子, 松本 義徳, 吉田 浩美, 黛 智則, 堀口 博, 吉江 麻里, 槻岡 正寛, 井沢 邦英, 山川 治, 有賀 道生
    2012 年 5 巻 p. 97-102
    発行日: 2012年
    公開日: 2022/12/31
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    知的障害を有する高齢者に対し,摂食・嚥下スクリーニングとして,クエン酸生理食塩水液を超音波ネブライザーで吸入させる咳テスト(couth test:CT)を実施し,嚥下障害の実態を明らかにするとともに,咳テストを行った全症例に対し,ビデオ嚥下Ⅹ線透視検査(videofluorography:VF)を行い咳テストとの相関性とを比較検討した.1%重量クエン酸生理食塩水液で陰性であった利用者は誤嚥なし30名,顕性誤嚥,不顕性誤嚥は確認されなかった.2%重量クエン酸生理食塩水液で陰性であった利用者は誤嚥なし30名,顕性誤嚥,不顕性誤嚥は確認されなかった.2%重量クエン酸生理食塩水液で陽性であった利用者は誤嚥なし30名,顕性誤嚥,不顕性誤嚥は確認されなかった.昨年度に引き続き,人数を増やして研究を行った.しかし現段階では咳テストが高齢重度知的障害者には有効であるという結果には至らなかった.今後も咳テストの施行件数を増やしデータの解析を行うとともに,利用者個々に応じた摂食・嚥下スクリーニング検査の必要性が示唆された.
  • 黛 智則, 吉江 麻里, 山川 治, 有賀 道生
    2012 年 5 巻 p. 103-107
    発行日: 2012年
    公開日: 2022/12/31
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    一般的に反芻は乳児に多く,患者自身が報告することはまれであり,反芻動物でみられる逆蠕動はヒトでは報告されていないため,成人における発症率や病態生理は不明な点が多い.反芻は通常,観察により診断され心理社会的既往を聴取することによって,基礎にある情動的ストレスが明らかになることがあるが,知的障害者では聴取することが難しく的確な評価がなされていない.そこで,反芻習癖を持つ知的障害者に対し調査票を作成し,当法人入所者367名,群馬県内知的障害者入所施設3施設310名に配布し記入を依頼した結果,実際に反芻を認められたのは55名であった.
  • 村岡 美幸, 志賀 利一, 田中 正博, 相馬 大祐, 木下 大生
    2012 年 5 巻 p. 108-114
    発行日: 2012年
    公開日: 2022/12/31
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    重度あるいは行動障害のある知的障害者の在宅生活を支える事業所の責任者等を対象とした研修が少なく,事業所同士のネットワーク作りや事業所運営等の安定化を図るための現任者向けの研修の必要性がうかがえた.そこで本研究では,研修のプログラムを作成及び実施することとした.
  • ―これまでの生活史を振り返る―
    五十嵐 敬太, 佐藤 愛美, 中里 ゆかり
    2012 年 5 巻 p. 115-117
    発行日: 2012年
    公開日: 2022/12/31
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    のぞみの園では,利用者の高齢化に伴い,機能低下が著しい利用者や医療的配慮が必要な利用者が増加している.若い頃は,生活の場から10分程歩いた先にある活動場所で,縫い物や農作業をしていた利用者も,高齢化した現在では,活動場所までの移動や2時間程度の活動への参加が困難になってきている.その結果,日中も寮内で過ごす利用者が増えてきている.
  • 木下 大生, 村岡 美幸, 志賀 利一
    2012 年 5 巻 p. 118-125
    発行日: 2012年
    公開日: 2022/12/31
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    国立重度知的障害者総合施設のぞみの園(以下当法人)では,1971年に創設されて以来,学生の実習受入れを行っている.これは,将来福祉及び教育機関等の職業に従事するための準備として,知的障害についての理解を深めるために実施している. 1987年の「社会福祉士及び介護福祉士法(以下「士士法」と表記)」により,ソーシャルワーカーや生活支援員相当の国家資格が創設され,これに伴って,社会福祉士の国家資格受験資格を取得するために,厚生労働省が定める規則に則った社会福祉施設等においての実習が求められることとなった.「士士法」に関連する実習についても資格創設当初から当法人では受け入れをしてきており,年々その受入人数は多くなってきている(表1).
  • 相馬 大祐, 志賀 利一
    2012 年 5 巻 p. 126-135
    発行日: 2012年
    公開日: 2022/12/31
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    平成23(2011)年の東日本大震災においては,福祉関係に関わらず,多くの団体・機関が被災地に赴き,多様な支援活動を行っている.その中で,埼玉県障害者相談支援専門員協会では,石巻市,東松島市,気仙沼市の障害者相談支援事業所へ,相談支援専門員を継続的に派遣するといった支援を行ってきた.全国の相談支援専門員に呼びかけ,おおよそ4~6名で構成される3つのチームが,1週間程度を1サイクルとして交代で,繰り返し被災地に派遣する形式の支援である1).本報告は,上記の派遣活動に関する研究事業(平成23(2011)年度障害者総合福祉推進事業「東日本大震災における被災地へ向けた派遣相談員の活動と災害時における支援活動の在り方」)の一部として行われた,現地相談支援事業所へのインタビュー調査の結果をまとめたものである.
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