看護薬理学カンファレンス
Online ISSN : 2435-8460
2020熊本
セッションID: 2020.1_ES-1
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看護薬理学教育セミナー1
本当は知らない薬の作用機序?ー新たな作用とリポジショニング
礒濱 洋一郎
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抄録

ドラッグリポジショニング(DR)とは、既に臨床応用されている既存薬の中から

新たな効能を見出し、実用化に繋げようとする研究戦略である。例えば、古くか ら抗炎症薬として使われてきたアスピリンが、現在では抗血小板薬として応用さ れているのは典型的な例であり、近年では、多くの既存医薬品に新たな薬理作 用が見出されてきている。このようなDR の拡大は、従来、我々が理解している 薬物の作用やその機序が、実は一面に過ぎず、既存薬の中にも大きな可能性 が秘められていることを意味していよう。一方、DR 戦略によって見出された新 作用も、適用拡大には剤形の変更を必要となり実用化に至らないものなどもあり、 課題は多い。我々は、DR のこのような課題を鑑み、多彩な薬理作用を持つ漢 方薬に着目した研究を行っている。漢方薬は古くから疾患名に応じた適用ではな く、症状や症候の治療を目的とする傾向にあり、新作用を見いだした際の使用 拡大が比較的容易である。

これまでに、アクアポリン(AQP)水チャネルの機能調節を創薬標的とした基 礎研究を行い、従来、尿量増加作用を持ち利尿薬と類似のものと認識されて きた五苓散に脳型の AQP であるAQP4 阻害作用や脳内炎症の抑制効果が あることを見出してきた。この成績をもととなり、最近、五苓散は脳外科領域で 慢性硬膜下血腫の治療および再発防止を目的に使用されるようになった。また、 AQP 機能を亢進する薬物についても検索し、漢方薬の清肺湯を見出している。 清肺湯は外分泌線型の AQP5 の細胞膜局在を増加させる作用を持ち、本作用 を通じてシェーグレン症候群に見られる乾燥症状の緩和が可能ではないかと期 待している。

本講演では、これらの成績の一端を紹介し、DR の可能性とその資源として の漢方薬の魅力についてお話したい。

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© 2020 本論文著者
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