看護薬理学カンファレンス
Online ISSN : 2435-8460
2020熊本
セッションID: 2020.1_S2-3
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シンポジウム2
次世代に求められる看護研究者の育成~異分野融合研究から得た経験をもとに~
橋口 暢子
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抄録

超高齢社会を迎え、医療の高度化、医療、看護の場の地域への展開など、医 療と看護を取り巻く環境は大きく転換している。その変革する社会のニーズに応対 するため、看護学には、新たなケア社会に寄与する発展が求められている。2014 年、日本学術会議では、「ケア時代を先導する若手看護学研究者の育成」において、 医療と介護の連携、生活支援や環境改善等を含めた多元的なケアの開発が必要 であり、看護学には、次世代の看護学研究者の養成、異分野との融合的研究が求 められると発表されている。

演者は、1999 年に、当時佐賀医科大学医学部看護学科で助教として看護教 育に携わっていた際に、九州芸術工科大学人間工学教育の門を叩き博士後期課 程に入学した。入学当初は、社会人学生として在籍していたが、学生生活の後半

2 年間は教育職を辞し、学生の身分として研究に専念した。その後も、日本学術振 興会特別研究員(RPD)や COE 特任助教の身分で、引き続き人間工学教室に約

10 年在籍し、その間、自身の専門である看護学を軸に、人間工学的視点を融合し た研究を行ってきた。人間を中心にモノ、環境を考えるという人間工学がもつスタン スは、看護学研究に馴染み安く、研究をより深く、また広く展開でき、異分野融合研 究の意義を身をもって経験した。また、私が、所属した人間工学研究室の研究環境 は、それまで演者が知る看護学研究の環境と大きく異なっており、その研究体制の 違いを知り得たことは、大きな学びとなった。具体的には、国や企業などからの研究 費(大型予算)を積極的に獲得し、学部生、修士、博士学生そしてポスドクがチー ムとなり、研究を組織(チーム)で取り組むという体制が整っていた。研究成果の発 表も、国内外に広く行い、その知見は、時に、国の政策にもつながるなど、研究の 積み重ねの先にある目標(ヒト、社会への還元)が明確で、若手の研究者が高い モチベーションを持ち自然と育つ環境がそこにはあった。

8 年前に、再び、看護教育の場に戻り、看護学研究者を育成する立場となった今、 若手研究者が自然と育つ環境をどうしたら作れるのか?理想とは程遠い状況と行き 来しながら、試行錯誤の毎日である。本シンポジウムでは、人間工学的視点を融合 させた研究を長年実施してきた経験をもとに、今、看護学において求められる次世 代の看護学研究者育成についての議論を深める機会としたい。

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© 2020 本論文著者
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