看護薬理学カンファレンス
Online ISSN : 2435-8460
2021仙台
セッションID: 2021.3_S2-3
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シンポジウム2
生殖医療・生殖看護の現場からつなぐ支援
星 るり子
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会議録・要旨集 オープンアクセス

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抄録

高度生殖医療(ART)の保険適応が検討されていますが、ART でも30 代後半から妊娠率は低下し 40 歳以降は流産率が急激に上昇します。通院回数が多く仕事と治療の両立が困難で、年齢というタイムリミットに怯えながら妊娠の確約はないまま期待と不安の中で患者さんは治療しています。昨年AIDなど第三者の配偶子提供を受けた場合の親子関係を定める法律が成立しましたが、生まれた子どもの出自を知る権 利は見送られました。また SNSでの精子提供や安易な卵子ドナーは多くの危険を伴 います。更にCOVID-19 の影響から診療や看護相談がリモートになるなど現場の対応も変更を余儀なくされています。常に進化する生殖医療と共に生殖看護は多くの課題を担っていると感じます。

当院では泌尿器科と婦人科が連携し、一般不妊・男性不妊・ART・妊孕性温存・ 着床前診断などを実施しています。私は不妊症看護認定看護師として主に生殖医療センター外来で勤務し、横浜市委託事業の不妊・不育専門相談や不妊看護外来を担当させていただいております。

不妊は亡くなる病気ではなく、子どもがほしくなければ不妊症でも何でもありません。しかし不妊を抱えて生き続ける方の苦悩は忘れてはいけないと思っています。不妊はなかなか妊娠できない時にふいに登場し、その方の価値観や人生に重くのしかか り、セクシュアリティな問題を含むのでカップルは孤立しています。看護者は第3 者と いう立場を利用して、それぞれの状況に応じた情報を提供し、共に考えることでカップルの意思決定の決め手になると考えます。また地域の助産師の方が不妊治療後の妊婦さんの対応に苦慮されている事例を知りましたが、施設の医療者だけでなく地域 を含めたチームでの協働と連携が必要と考えます。

今年、不妊症看護認定看護師は「生殖看護認定看護師」に変更されました。不妊 症看護に限定されない支援が求められますが、一般の方だけでなく看護職の方にとっても生殖看護はまだまだマイナーな分野です。若い世代の健康増進のためのプレコンセプションケア、がんなどの患者さん対象の妊孕性温存ケア、不妊治療後の妊婦や褥婦ケアなど幅広い支援が必要と考えます。当日は生殖医療や生殖看護の現場におり ます立場から地域へつなぐ支援についてお話させていただきます。

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© 2021 本論文著者
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