主催: 看護薬理学カンファレンス
会議名: 看護薬理学カンファレンス 2021 in 仙台
回次: 3
開催地: 仙台
開催日: 2021/12/11
現在、カップルの 5.5 組に1 組が不妊症であると考えられており、その約半数に男性因子が関与していると考えられている。
しかし、我が国は世界有数の生殖補助医療 (ART)となっており、精液所見不良な症例も、男性因子の原因精査や治療を行うことなく体外受精や顕微授精に移行する 例が少なくない。理由として、ARTへのアクセスが容易であるだけでなく男性不妊症 の病態が複雑であり、その治療が十分エビデンスレベルが高いとは言えない点にある と考えられる。
2015 年に、我が国における男性不妊症の検査・治療に関する実態調査が行われ たが、そこでも男性因子の治療に対して消極的なART認定施設が数多く見られた。 その理由として「コンサルトできる泌尿器科医がいない」とともに「コンサルトしても精液所見が改善しないから」が上位に挙げられた。先に述べた通り、男性不妊症は病態が多因子的であり複雑であることから、専門家による正しい検査・診断および治療が必要であり、正しく介入を行うことにより治療成績が向上するエビデンスが蓄積され つつある。先日刊行された「生殖医療ガイドライン (一般社団法人日本生殖医学会編 )」 においても、「重度男性不妊症の場合、泌尿器科的検査を行う」というCQ が推奨グ レードAと位置付けられた。我が国においても男性不妊治療のエビデンスおよびその 重要性が徐々に浸透されつつあると考えられる。
しかし実際は男性不妊症にはどのような原因があり、どのような検査を行い、どの ようなプロセスで治療が行われているか広く知られていないのが現状である。
本講演では、男性不妊の診断・治療につきオーバービューを行う予定である。医療者にも男性不妊症に関する理解を深めていただき、「カップルで取り組む不妊治療」の 啓発の一助となれば幸いである。