主催: 看護薬理学カンファレンス
会議名: 看護薬理学カンファレンス 2022 in 福岡
回次: 1
開催地: 福岡
開催日: 2022/03/06
多くの疾患に対して「薬剤」の貢献度は大きく,人類が日常生活を送るうえで,ある意味必要不可欠なものであると言っても過言ではない。一般的には,使用す る患者の疾患の状態や,肝機能・腎機能などを考慮して投与される。特に慢性疾 患においては,患者は疾患と上手に付き合っていく必要があり,薬剤もその一助 を担っている。
しかしながら,あくまで薬剤は人体にとって異物であり,使用するにあたっては 留意しなければならないことは多い。妊婦や授乳婦においては,当該の患者のみ ならず「胎児・乳児」への影響も考慮されなければならないうえ,安全性を明ら かにするための臨床研究もハードルが高い。
妊婦や授乳婦を対象とした薬物療法を考えるうえで特に重要なことが「,リスク の評価」である。クスリはリスクがあるものであるため,ベネフィットに対するリス クの程度を適切に見極めることが重要である。そのような中,リスクがベネフィッ トを上回る場合や,リスクの程度を適切に見積もることが困難な場合には,使用 を控えざるを得ない。しかし,リスク評価をせずに一概にすべての薬を禁止する ことは,医療者にとっては負担は少ないが,患者および胎児・乳児のベネフィット を損ないかねない。
一方で妊婦や授乳婦が患者の場合,安全が担保された薬剤であっても,丁寧 に説明しなければ,薬の服用に慎重になるあまり,必要な薬剤のアドヒアランス が低下することも危惧される。患者の不安を解消し,安心して内服できるような 声掛けや相談しやすい雰囲気を医療職が心掛ける必要もある。
今回は一般的な慢性疾患について,妊婦・授乳婦への使用に注意が必要な 薬剤を概説し,情報収集するためのツールや書籍などについても紹介する。また, 若年者でがんに罹患した場合,妊娠をきっかけに発見される場合もある。抗がん 剤のように毒性の高い薬剤であっても,適切にリスク評価を行うことで,妊婦に対 しても治療を行うこともある。具体的な症例を示し,注意点などについて共有する。
本セミナーを通じて,日々の看護業務に少しでもお役立てる情報が提供できれ ば幸いである。