本論でいうバリューチェーン林業(VCF)とは,林産物の生産・採取をバリューチェーン上に位置づけた新しい林業形態である。従来の林業が林産物の生産活動のみを対象としたのに対し,VCFは,林産物が市場へと流通するまでの製造,出荷・流通,販売といった一連の活動を対象とする。本論では,その事例としてベトナムゲアン省クエホン県で試行中の金花茶を基軸としたVCFを紹介する。VCFの利点は,1)市場での需要動向に基づき林産物の生産量を調整できるため林産物の持続可能な利用が可能となる,2)流通経路が単純化するため,中間マージンを圧縮することが可能となるの2 点である。従来支払っていた仲介業者へのマージンを生産農家から買い取る林産物の価格に転嫁することで,農家の収入は増加する。金花茶は黄花椿の花を乾燥させた「お茶」であるが,黄花椿は林冠が鬱閉した暗い林内でのみ生育できる中低木である。そのため,同林産物の生産には林冠の存在が必要不可欠であり,森林保全を促進させる。暗い林内でのみ生産可能な林産物のバリューチェーン化は,森林保全策として期待される。