2022 年 13 巻 1 号 p. 17-21
スクミリンゴガイ(Pomacea canaliculata)は,一般にジャンボタニシとも呼ばれる淡水生巻貝である。1980 年代に台湾から移入されたのち,西日本を中心に爆発的に繁殖し,農業や在来生態系に大きな被害を与えている。スクミリンゴガイについては,殺貝や捕獲に関する研究は比較的多く存在するが,捕獲後の廃棄方法に関する研究は少ない。本研究では,捕獲後のスクミリンゴガイの有効利用方法を模索するために,スクミリンゴガイを乾燥粉末化した後に,肥料として利用することの有効性を検証した。スクミリンゴガイの乾燥粉末を混ぜ込んだ土と混ぜ込んでいない土でコマツナを生育させ,発芽後2 週間程度経過した後に地上部(葉+茎)の長さを計測し比較したところ,乾燥粉末を混ぜ込んだ方が高い値となった。また,表土に乾燥粉末を撒いたポットと撒いていないポットでブロッコリーを育て,葉面積を比較した結果,乾燥粉末を撒いた方が昆虫による食害が少なく,葉面積の値が高かった。乾燥粉末の成分分析を行ったところ,石灰分を中心に,成長促進に不可欠なリン酸分,苦土分,窒素分も多く含まれていた。以上より,スクミリンゴガイの乾燥粉末には石灰分の供給効果や成長促進効果があると考えられ,肥料として活用することができると考えられる。