抄録
本論は、『爾雅』に見られる病名を分析し、それがどのように変化していったかを分析した。用例が比較的少なく、後世ではあまり使われなくなっていったものも存在する一方、用例は比較的多く、その病気としての意味が薄れて一般的な語として用いられるようになったものもあった。また、病気以外の意味がもともとあり、その用例も多く、病気としての意味が次第に淘汰されていったものもあった。そして、『爾雅』における精神的意味での病気とは異なり、身体的な病気としての意味を持ち、その使用例も多く、後者の方が次第に定着していったものもある。『爾雅』における多くの語が病気としての意味を失っている一方で、病気としての意味の用例が多く、出土文献にも用例が見られ、医学文献にもその意味が引き継がれていったものもあった。なお、病気としての意味を持つ用例が極めて少なく、当時の使われ方を窺い知ることができないものもあった。