抄録
『死にぞこないの青』は日本作家乙一の代表作の一つである。作品は、主要な登場人物の羽田先生が教師のモラル
を無視し、自分の学生をいじめることを描いている。その過程で起こった言語的な侮辱や肉体的な暴力、殺人未遂を含む一連の行為は、自由意志と理性意志の対立と衝突を表している。本稿では、文学倫理学批評を理論的な基盤として、スフィンクス因子を用い、倫理的な視点から羽田先生を分析し、その人物像から示される自由意志と理性意志の衝突を考察した。また、いじめ問題をめぐる師弟の倫理関係を現実に照らし合わせ、現在の教育環境下で教師の道徳欠如などの現象について議論し、教育過程でのモラルの重要性を強調した。