日中言語文化
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味覚における中国
飲食と文学文化の視角からの谷崎潤一郎の中国旅行
陳 雲哲劉 珈序
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2025 年 18 巻 p. 85-

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抄録
日本の大正時代、交通機関や宿泊設備の発達、旅行代理店の手配で、中国一周旅行が可能になった。谷崎潤一郎は1918年と1926年二回、中国旅行をして、十数篇の游記、随筆と小説を創作したうえ、その後の中日文学交流の架け橋にもなっている。地域と空間の開放は、ただ交流における利便さをもたらしただけではなく、また文化における推移でもある。美食は谷崎にとって人生と文学における欠かせない存在であり、谷崎の中国旅行は、中国料理の旅でもある。谷崎の味覚の原点は「偕楽園」に遡ることができ、それは谷崎の文学に多大な影響を与えた。幼少時代の生活体験と記憶は無視できない存在であり、作家の創作の唯一の源になることさえある。「偕楽園」はそんな存在である。その幼少時代の記憶は、中国旅行において蘇り、ひいては中国関連作品に映し、谷崎の飲食哲学をも体現している。
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