日大医学雑誌
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シンポジウム
遷延性意識障害に対する脳脊髄刺激療法
山本 隆充深谷 親吉野 篤緒片山 容一
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2014 年 73 巻 2 号 p. 109-111

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抄録

要旨 遷延性意識障害では,vegetative state (VS) とminimally conscious state (MCS) を明確に区別する必要がある.VS には視床CM-pf complex をターゲットとする脳深部刺激療法,MCS には上位頚髄刺激療法を用いてきた.視床CM-pf complex 刺激では,大脳皮質への広範投射系を賦活することにより,刺激開始直後から激しい覚醒反応と脳血流の増加を認める.また,5 Hz の上位頚髄刺激では上肢のmuscle twitch を誘発し,脳血流を増加させる.手術適応を決定するためには残存する脳機能を正確に評価する必要があり,神経学的評価と電気生理学的評価が有用である.VS は脳深部刺激療法によって植物状態から脱却してもベッド上生活であったが,上位脊髄刺激によってMCS から回復した症例では運動機能の回復も良好で,特に上肢の運動機能回復が著しかった.脊髄刺激によって繰り返しmuscle twitch を誘発することは,関節拘縮や筋の廃用性萎縮を予防するとともに,運動機能回復に有用であり,新たなニューロモデュレーション技術として期待される.

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© 2014 日本大学医学会
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