2022 年 81 巻 1 号 p. 39-44
2019 年から 2020 年 の 2 年間に受診した Grade2 とGrade3 の眩暈を伴わない 60 歳以上の突発性難聴の男性5 例に漢方薬の八味地黄丸を投与した.5 例中治癒または回復に至ったのは 3 例であった.2015 年から 2018 年の 4 年間で,同レベルの眩暈を伴わない突発性難聴で受診した 60 歳以上の男性は 4 例であったが,八味地黄丸は投与していない.4 例中治癒または回復に至ったのは1 例であった.八味地黄丸投与群の初診時と最終受診時の 5 分法平均聴力はそれぞれ 58.2 ± 9.7 dB と 36.2 ± 14.2 dB で,有意な改善が認められた.一方,非投与群の初診時と最終受診時の 5 分法の平均聴力はそれぞれ 49.2 ± 12.5 dB と50.2 ± 20.0 dB で,有意な改善は認められなかった.さらに,投与群と非投与群の聴力の改善度を初診時と最終受診時の 5 分法平均聴力閾値において比較したが,投与群の聴力閾値の変化は −22.0 (± 18.2) dB と非投与群は 2.6 (± 13.3) dB で (P = 0.050044),両者の改善度には有意差は認められなかった.