2023 年 82 巻 1 号 p. 55-60
MTX 関連リンパ増殖性疾患 (MTX-LPD) は葉酸代謝拮抗剤である methotrexate (MTX) の副作用として知られている.MTX-LPD の多くは節外病変として発症するが,稀に中枢神経系に原発することがある.中枢神経系に原発した MTX-LPD に関する症例の報告は少なく,有効な治療方法は確立されていない.我々は,中枢神経系に原発した MTX-LPD の症例に対し,rituximab,procarbazine,methotrexate および vincristine による原発性中枢神経系リンパ腫の新規治療法である R-MPV 療法を行った症例を経験したため報告する.症例は 56 歳の女性で,頭痛,記憶障害および歩行障害を主訴に受診した.既往歴に関節リウマチがあり,MTX を 25 年間内服していた.頭部 magnetic resonance imaging で左前頭葉および左後頭葉に拡散強調像で高信号を呈し,ガドリニウムで均一に造影される腫瘍性病変を認めた.開頭腫瘍摘出術を行い,MTX-LPD と診断した.MTX を中止して経過を観察したが,腫瘍の退縮が得られなかったため,R-MPV 療法を開始した.治療開始後も明らかな腫瘍退縮が得られず,4 クールを終了した時点で死亡した.MTX-LPD は MTX の中止により腫瘍が退縮することが知られているが,中止しても腫瘍が退縮しない症例では予後が不良であることが想定される.化学療法の効果が限定的であれば,早期の放射線治療の導入や他の化学療法への変更を検討する必要があると考えられた.