2025 年 84 巻 3 号 p. 101-105
症例は78歳女性,黄疸で当院紹介となった.内視鏡的膵胆管造影検査で胆嚢管合流部やや遠位部から肝門部領域胆管に30 mmの長軸進展する腫瘤と胆道狭窄を認め,生検で中分化型腺癌が検出された.肝S8にPET陽性の結節を認め,肝門部領域胆管癌cT2a,cN0,cM1 (HEP),cStage IVBと診断された.狭窄部にプラスチックステントを挿入しgemcitabine cisplatin (GC) 療法を導入した.治療開始前はCEA 6.5 ng/mL,CA19-9 6231.5 U/mLであった.11コース施行中に,ステントが腸管内に逸脱し再挿入目的に入院した.胆道造影での狭窄長及び程度が改善し胆道鏡による胆道内観察も平滑な隆起のみで生検で悪性像の確認はされなかった.肝転移と診断された病変も画像上特定されずCA19-9 168.4 U/mLと低下したため,conversion surgeryを予定した.手術所見では胆管の腫瘤は確認できず,術中迅速病理組織検査で,肝,十二指腸両側の胆管断端に悪性像を認めないため肝外胆管切除と肝門部リンパ節郭清が選択された.病理組織学的検査では,胆管上皮の色調の変化と瘢痕部に10 mmの範囲に上皮内癌が確認された.術後経過良好で,術後11日目に退院,術後1年現在,再発なく経過している.今回,切除不能肝門部領域胆管癌のGC療法中に腫瘍縮小効果を認めconversion surgeryとなった症例を経験したため報告する.